フローリングの上張りは、既存の床を剥がさず新しい床材を重ねる工法です。工事費を抑えられ、短期間で部屋の印象を変えられるのが大きな魅力です。しかし、下地の状態や建具との干渉を無視すると、かえって使いにくくなる場合もあります。後悔しないための重要ポイントを確認しましょう。
フローリングの上張りで後悔しないための判断ポイント
フローリングの上張りリフォームは、コストパフォーマンスに優れた選択肢ですが、どんな状況でも適しているわけではありません。「こんなはずではなかった」という失敗を防ぐためには、施工前の現状把握が何よりも大切です。上張りを決める前に確認すべき、具体的な判断基準を詳しく見ていきましょう。
上張りが向く床と向かない床
上張り工法を検討する際、最も重要なのは「現在の床(下地)がしっかりしているか」という点です。上張りは既存のフローリングの上に新しい板を貼り付けるため、元の床に腐食や著しい傷みがある場合、その上から何を貼っても根本的な解決にはなりません。例えば、踏むとフカフカする場所があったり、シロアリの被害が疑われたりする場合は、上張りではなく床を一度剥がして下地から直す「張替え」が必要です。
一方で、上張りが向いているのは、床の構造自体に問題はなく、表面の傷や色あせ、汚れが気になっているケースです。築年数が浅いマンションや、下地の合板がしっかりしている戸建てであれば、上張りによって短期間で新築のような美しさを取り戻すことができます。また、上張りは既存の床を剥がす際の騒音や廃材が出にくいため、近隣への影響を最小限に抑えたいマンションリフォームにも非常に適した工法と言えます。
仕上がりを左右する厚みと段差
上張りの最大の課題は、床の高さが「新しく貼る床材の分だけ上がる」ことです。通常、フローリングの厚みは12mm程度が一般的ですが、上張り専用の床材には1.5mmから6mmといった薄型のものが多くラインナップされています。わずか数ミリの差に思えるかもしれませんが、これが室内での歩行やバリアフリー性に大きな影響を与えます。
例えば、廊下と部屋の間に段差がない「フラットな設計」の家の場合、部屋だけに上張りをすると、廊下よりも部屋の床が高くなり、入り口にわずかな段差が生じてしまいます。また、キッチン周りや掃き出し窓のサッシ枠との兼ね合いも重要です。施工後の高さが既存の枠よりも高くなってしまうと、見た目が不自然になるだけでなく、つまずきやすくなる危険もあります。どの程度の厚みであれば許容できるのか、既存の建具やサッシとの位置関係を事前にミリ単位でシミュレーションすることが、美しい仕上がりへの近道です。
音ときしみの出方を想定する
「床鳴り(きしみ)」に悩んでいる場合、上張りで解決できると考えている方が多いですが、ここには注意が必要です。床鳴りの原因がフローリング表面の擦れであれば、上張りで解消することもあります。しかし、原因が下地の根太(ねだ)や大引きといった構造部分の緩みにある場合、上から新しい床材を貼ってもきしみ音は消えません。それどころか、上張りによって床の重量が増すことで、さらに音が大きくなってしまう可能性さえあります。
また、マンションにお住まいの場合は「遮音性能」にも配慮が必要です。もともと遮音フローリング(踏むとふわふわする床)が貼られている場合、その上に硬い上張り材を貼ると、遮音性能が変化したり、床材がうまく接着できなかったりすることがあります。遮音規定があるマンションでは、管理規約に適合した専用の床材を選ぶか、上張りが可能かどうかを専門家にしっかり診断してもらう必要があります。施工後に「音のトラブル」で後悔しないよう、現在の床の音の正体を突き止めておくことが不可欠です。
見積もりで必ず比較したい項目
上張りリフォームの見積もりを取る際は、単に「総額」を見るだけでなく、内訳を細かく比較することが大切です。上張りは張替えに比べて安価な傾向にありますが、業者によって含まれる作業範囲が異なるからです。特に確認したいのは「下地調整費」と「端部の処理費用」です。既存の床に凹凸がある場合、そのまま貼ると新しい床が浮いてしまうため、事前の補修が必要になります。
さらに、ドアの干渉を避けるための「ドアの下部カット費用」や、壁際を綺麗に見せるための「巾木(はばき)の交換・加工費」が含まれているかもチェックしましょう。これらの付帯工事を見落とすと、後から追加費用が発生したり、不格好な仕上がりを受け入れざるを得なくなったりします。また、使用する床材のグレード(耐傷性、ノンワックス仕様、抗菌性など)も価格を左右する大きな要素です。単に安い見積もりを選ぶのではなく、自分の要望がどこまで網羅されているかを確認することが、後悔を防ぐポイントです。
上張りリフォームで選ばれやすい床材おすすめ
上張りリフォームの成功を握るのは、床材選びです。現在は大手建材メーカーから、施工性に優れ、デザイン性も高い薄型床材が多数販売されています。代表的な人気商品をピックアップしました。
パナソニック USUI-TA[ウスイータ](1.5mmリフォームフローリング)
わずか1.5mmという驚異的な薄さが特徴の商品です。既存の床の上に貼っても段差がほとんど気にならず、ドアの開閉にも干渉しにくいため、リフォームで最も選ばれている床材の一つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | パナソニック |
| 厚み | 1.5mm |
| 特徴 | 非塩ビ素材で環境に優しく、耐熱性があるため床暖房の上からも施工可能。 |
| おすすめ理由 | 薄いため見切り材が不要なケースが多く、コストを抑えて綺麗に仕上がります。 |
| 公式サイト | パナソニック USUI-TA 詳細ページ |
LIXIL リノバ うわばReフロア(重ね張り工法のフローリング)
LIXILの建具やインテリアとカラーコーディネートがしやすい商品です。傷に強く、日々のお手入れが楽な表面仕上げが施されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | LIXIL |
| 厚み | 3mm |
| 特徴 | 耐キャスター・耐車椅子仕様で、擦り傷にも強い頑丈な設計。 |
| おすすめ理由 | LIXILの他製品と色を合わせやすく、家全体の統一感を出しやすいのが魅力です。 |
| 公式サイト | LIXIL リノバ サービス紹介 |
DAIKEN イエリアフロア3T セレクト(3mm厚の上張り床材)
日本の住宅環境に合わせた、傷や水汚れに強い高機能な3mm厚フローリングです。豊富な木目デザインから選べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | DAIKEN(大建工業) |
| 厚み | 3mm |
| 特徴 | 基材に高密度繊維板を使用しており、へこみや傷に非常に強い。 |
| おすすめ理由 | 耐汚染性が高いため、キッチンや洗面所などの水回りリフォームにも適しています。 |
| 公式サイト | DAIKEN イエリアフロア3T 製品情報 |
DAIKEN 吸着フローリング(置くだけタイプ)
接着剤を使わず、裏面の吸着加工で固定するタイプです。賃貸住宅や、DIYで手軽に模様替えをしたい場合に最適です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | DAIKEN(大建工業) |
| 厚み | 4mm |
| 特徴 | 何度でも貼り直しができ、剥がした跡に糊残りがしにくい特殊吸着シート。 |
| おすすめ理由 | 専門業者に頼まず自分で施工できるため、最も手軽に床を新しくできます。 |
| 公式サイト | DAIKEN 吸着フローリング 詳細 |
EIDAI アトムフラット(6mm厚の薄型設計)
天然木の風合いを大切にしつつ、厚みを抑えた6mm厚のフローリングです。しっかりとした踏み心地を求める方に適しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | EIDAI(永大産業) |
| 厚み | 6mm |
| 特徴 | 抗ウイルス・抗菌加工が施されており、衛生面でも優れた性能を発揮。 |
| おすすめ理由 | 薄型ながら適度な厚みがあるため、歩行時の安心感と高級感があります。 |
| 公式サイト | EIDAI アトムフラット 製品情報 |
EIDAI セーフケアダイレクト(両面テープ施工で省施工)
主に福祉施設や高齢者住宅向けに開発された、安全性と施工効率を重視した商品です。家庭内での転倒リスクを減らしたいリフォームに役立ちます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | EIDAI(永大産業) |
| 厚み | 2.5mm / 3.5mm等 |
| 特徴 | 両面テープで貼り付けるだけの簡単施工。クッション性があるタイプも選択可能。 |
| おすすめ理由 | 接着剤の匂いが苦手な方や、スピーディーな工事を希望する方に最適です。 |
| 公式サイト | EIDAI セーフケアダイレクト 詳細 |
フローリング上張りで後悔が出やすい落とし穴と対策
上張りリフォームで「失敗した」と感じるポイントは、実は共通しています。事前の確認不足や、仕上がりイメージの乖離が原因であることがほとんどです。具体的な落とし穴を知り、それに対する確実な対策を講じることで、満足度の高いリフォームを実現しましょう。
ドアや建具が当たる問題
上張りリフォームで最も多い後悔が、「ドアが床に当たって開かなくなった」というトラブルです。特に開き戸(ドア)の場合、床との隙間(チリ)がもともと数ミリしかないことが多く、3mmや6mmの床材を貼ると物理的に干渉してしまいます。無理に開閉すると新しく貼った床を傷つけてしまうため、事前のチェックは欠かせません。
対策としては、事前に全てのドアの隙間を測り、干渉する場合はドアの下部を削る「アンダーカット」という加工を業者に依頼することです。ただし、ドアの構造によってはカットできないものや、カット後の見た目が変わってしまうものもあります。また、引き戸の場合はレールの高さ調整が必要になることもあります。床材の厚みを選ぶ際は、デザインだけでなく「今のドアがそのまま動かせるか」を最優先の基準にしてください。
巾木や見切りの納まり不足
床と壁の接点にある「巾木(はばき)」の処理をどうするかで、部屋全体の高級感が変わります。上張りの場合、既存の巾木をそのままにして床材を突きつける「突きつけ施工」が一般的ですが、これだと端部にわずかな隙間が見えたり、コーキング材の跡が目立ったりすることがあります。せっかく床が綺麗になっても、端っこの仕上げが雑だと、リフォームした実感が薄れてしまいます。
これを防ぐには、床材と一緒に巾木も新しく交換するか、既存の巾木の上に被せる「リフォーム用巾木」を活用するのが有効です。また、廊下と部屋の境界線に入れる「見切り材」についても、上張り専用の薄型で見栄えの良いものを選ぶことが大切です。細かい部分の「納まり(おさまり)」について、施工業者と事前に図面やカタログで打ち合わせをしておくと、理想の仕上がりに近づけることができます。
床暖房や下地条件の見落とし
床暖房が入っている部屋に上張りをする場合は、特に注意が必要です。通常のフローリングを重ねてしまうと、熱が伝わりにくくなるだけでなく、熱による床材の反りや隙間の原因になります。必ず「床暖房対応」と明記されている専用の薄型床材(パナソニックのウスイータなど)を選ばなければなりません。また、床暖房のメーカーによっては上張りを推奨していないケースもあるため、保証内容の確認も重要です。
下地のコンディションも見逃せません。古い床が沈んでいる状態で上張りをすると、新しい床材を貼った後にそこがパカパカと浮いてしまい、歩くたびに不快な音が鳴ることがあります。この場合は、パテなどで下地を平滑にする処置が必要です。見積もり段階で業者にしっかり床を踏んでもらい、下地の調整が必要かどうかを確認してもらうことが、施工後の「浮き」や「沈み」を防ぐための確実な対策となります。
施工品質の差が出るポイント
上張りリフォームは比較的簡単な工事に見えますが、実は職人の腕によって差が出やすい部分があります。特に、柱の凹凸に合わせた複雑なカットや、接着剤の塗布量の加減などは、経験の差が如実に現れます。接着剤が多すぎると床材の間から漏れ出して汚れの原因になり、少なすぎると後で剥がれてくるというトラブルにつながります。
対策として、施工を依頼する業者が「上張り工法の経験が豊富か」を確認してください。また、保証期間についても必ずチェックしましょう。万が一、施工後に浮きや剥がれが生じた際、無償で補修してくれる期間があるかどうかは大きな安心材料になります。可能であれば、過去の施工事例の写真を見せてもらうなどして、端部の処理がどれくらい丁寧にされているかを確認しておくと、信頼できる業者選びの基準になります。
まとめ|フローリング上張りの後悔を減らすために押さえること
フローリングの上張りリフォームは、適切な準備と判断さえできれば、費用を抑えて住まいの価値を高められる素晴らしい方法です。後悔しないための最大のコツは、現在の床の健康状態を正しく診断し、建具との干渉を事前に100%把握しておくことに尽きます。
まずは気になる床材のサンプルを取り寄せ、実際に床に置いて厚みや色味を確認してみましょう。また、信頼できるリフォーム業者に現地調査を依頼し、段差の問題や巾木の処理について具体的な提案をもらうことも大切です。今回紹介したポイントとおすすめの床材を参考に、理想の住空間づくりを成功させてください。

