2階の部屋にエアコンを設置する際、ベランダがない、またはベランダを広く使いたいといった理由から、室外機を1階の地面に置くケースが多くあります。しかし、この「高低差のある設置」には、費用や性能面で無視できないデメリットが存在します。後悔しないために、設置前に確認すべきリスクと対策を整理しましょう。
2階のエアコンで室外機を1階に置くデメリットと結論
2階の室内機に対して室外機を1階に設置する「立ちおろし」工法は、見た目がスッキリする一方で、配管が長くなることによる影響を強く受けます。工事費の増加、電気代への影響、そして将来のメンテナンス性の3点において、標準的な設置方法とは異なる課題が生じるため、事前にそれらを把握しておくことが失敗を防ぐ鍵となります。
工事費が上がりやすい
2階の室内機から1階の室外機へと配管をつなぐ場合、一般的な「標準工事」の範囲を大きく超えるため、追加費用が重なるのが通例です。多くの家電量販店や工務店の標準工事に含まれる配管の長さは4メートルまでですが、2階から1階へ下ろすとなると、建物の高さや取り回しにもよりますが、通常7メートルから10メートル前後の配管が必要になります。
工事費が上がる主な要因は以下の通りです。
- 配管の延長料金(1メートルあたり数千円程度)
- 高所作業費(ハシゴを使用して壁面に配管を固定する作業など)
- 配管化粧カバーの延長料金
- (場合によっては)作業員の2名体制追加工賃
特に、ハシゴが届かないような狭い場所や、足場を組む必要がある特殊な環境では、さらに費用が跳ね上がることもあります。化粧カバーについても、2階から1階まで通すとなるとそれなりの長さが必要になり、部材費だけでなく工賃も加算されます。立ちおろし工事を検討する際は、本体代金とは別に、工事費だけで3万円から5万円程度の追加予算をあらかじめ見込んでおく必要があります。
冷暖房効率が落ちる場合がある
エアコンの配管が長くなればなるほど、冷媒ガスが室内機と室外機の間を移動する距離が増えます。この移動距離の長さが、冷暖房の効率にわずかな影響を及ぼします。エアコンは冷媒ガスが熱を運ぶことで温度を調節しますが、配管が長いとその途中で外部の影響を受けやすくなり、熱のロスが発生してしまうからです。
また、室内機が2階、室外機が1階という「高低差」がある場合、室外機のコンプレッサーは冷媒ガスを上方向へ押し上げるために、通常よりも負荷がかかります。この負荷が原因で、同じ能力のエアコンを標準的な設置方法で使った場合と比較して、わずかに消費電力が増え、冷暖房の効きが緩やかになる傾向があります。
とはいえ、近年の最新機種は配管が15メートル程度までであれば能力低下を最小限に抑える設計がなされています。しかし、それでも「全く影響がない」わけではありません。特に真夏や真冬のピーク時には、設定温度に達するまでの時間が少し長く感じられることがあります。効率を重視するのであれば、できるだけ配管が短くなる設置場所を検討するか、後述するような長配管に強い高機能モデルを選ぶことが推奨されます。
配管ルートの制約が増える
2階から1階へと配管を下ろす際、壁面にある様々な障害物を避けてルートを確保しなければなりません。窓の位置はもちろんのこと、雨樋、他の部屋の換気口、電気の引き込み線、さらには隣家との境界距離など、考慮すべき点は多岐にわたります。最短ルートで下ろしたくても、窓の真上を配管が通ってしまうような場合は、大きく迂回させる必要があり、その分さらに配管が長くなります。
配管ルートが複雑になると、以下のような問題が生じます。
- 曲がり角(エルボ)が増えることによる内部抵抗の増加
- 外観デザインの損なわれ(白いカバーが壁を横切るなど)
- 隣地境界線が狭い場合、ハシゴ作業が物理的に不可能になる
特にデザイン性を重視する住宅の場合、太い化粧カバーが外壁を縦断することに抵抗を感じる方も少なくありません。また、雨樋などの設備と干渉すると、将来的な建物のメンテナンス(塗装や補修)の際に、エアコンの配管が邪魔になって作業効率が落ちたり、別途脱着費用が発生したりすることもあります。設置前に、どの壁面を通り、どこに室外機を置くのかを正確に図面や現地でシミュレーションすることが極めて重要です。
ドレン水の処理が難しくなることがある
冷房運転時に室内機から発生する水(ドレン水)を排出するドレンホースの扱いも、立ちおろしでは注意が必要です。通常、ドレンホースは冷媒配管と一緒に束ねて1階まで下ろしますが、配管が長いほどホースの「勾配(傾斜)」に気を配らなければなりません。もし途中でホースがたるんだり、逆勾配になったりする箇所があると、水がうまく流れず室内機側に逆流し、部屋の中で水漏れを引き起こす原因になります。
また、1階まで下ろしたドレン水の排出口をどこに設定するかも問題です。地面にそのまま垂れ流しにすると、1階の窓周辺や通り道が常に濡れた状態になり、苔やカビの発生、あるいは夏場に害虫が寄ってくる原因になることもあります。理想的には、1階の雨樋に接続するか、専用の排水溝まで誘導する処置が望ましいですが、これには追加の部材や工数が必要です。
さらに、マンションや住宅密集地では、排出された水が隣家の敷地に入らないよう配慮が必要です。ドレンホースの末端が強風で暴れないように固定したり、冬場には暖房運転で室外機から出る水の処理も考慮に入れたりしなければなりません。2階設置×1階室外機という構成は、水という物理的な重みがある物質を重力に逆らわず、かつ美しく1階へ逃がすための高度な設計が求められる方法と言えます。
配管が長くても設置しやすいエアコンおすすめ
配管が長くなる「立ちおろし」設置では、エアコン本体の性能も重要になります。特に高低差や長配管によるパワー低下を補える強力なコンプレッサーを搭載したモデルや、メーカーが公式に長配管の仕様を明記している機種を選ぶと安心です。
| メーカー | シリーズ名 | 配管長(最大) | 高低差(最大) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| パナソニック | エオリア Xシリーズ | 20m | 15m | 立ち上げ・立ちおろしに強く、パワフルな運転が可能。 |
| 日立 | 白くまくん Xシリーズ | 20m | 10m | 3階建ての設置例なども豊富で、高低差への対応力が高い。 |
| 富士通ゼネラル | ノクリア Z/Xシリーズ | 20m | 15m | 冷媒加熱技術などにより、長配管でも安定した能力を発揮。 |
| 東芝 | 大清快 DRシリーズ | 20m | 10m | 仕様表に長配管対応を明記。コンプレッサーの信頼性が高い。 |
| 三菱電機 | 霧ヶ峰 Zシリーズ | 15m | 10m | 立ちおろし時の冷媒の流れを最適化する制御機能を搭載。 |
| ダイキン | うるさらX (RXシリーズ) | 15m | 12m | 加湿・換気機能も考慮した設計。強力な暖房能力が魅力。 |
パナソニック エオリア Xシリーズ(配管長20m・高低差15mの例)
パナソニックの最上位モデルであるXシリーズは、長配管・高低差のある環境でも安定した能力を発揮するよう設計されています。最大配管長20メートル、高低差15メートルというスペックは、一般的な2階建て住宅はもちろん、3階建てから1階への立ちおろしにも対応できるほどの余裕を持っています。
コンプレッサーの制御技術が優れており、立ちおろし時に問題となりやすい「オイル戻り」なども考慮されています。また、ナノイーXによる清潔機能やAIによる気流制御など、エアコンとしての基本性能も極めて高く、設置の制約が多い環境であっても快適な空調を提供してくれます。
日立 白くまくん Xシリーズ(3階建て対応の配管条件が明記)
日立の「白くまくん」Xシリーズは、高低差のある設置において非常に定評があります。公式のカタログや仕様書において、3階建て住宅への設置例が具体的に示されていることも多く、立ちおろし工事を予定しているユーザーにとって安心感のあるブランドです。
凍結洗浄機能など、室内機・室外機の両方を清潔に保つ機能が充実しており、メンテナンスが難しい高い位置に室内機を置く場合でも、長期間性能を維持しやすいのがメリットです。高低差10メートル、配管長20メートルまでの仕様であれば、標準的な2階建ての立ちおろしで困ることはまずありません。
富士通ゼネラル ノクリア(最大配管長20m・高低差15m対応の記載)
富士通ゼネラルのノクリアシリーズ、特にXシリーズやZシリーズは、コンパクトながら非常にパワフルな運転が可能です。配管長20メートル、高低差15メートルまで対応しており、設置場所の自由度が極めて高い機種といえます。
独自の気流制御により、2階の天井付近に溜まりやすい熱気や、冬場の足元の冷えを効率よく解消してくれます。長配管によるわずかな効率低下を、本体の高い省エネ性能でカバーできる点も、立ちおろし設置には有利に働きます。
東芝 大清快(最大配管長20mの仕様記載が多い)
東芝の「大清快」は、質実剛健な設計が特徴で、コンプレッサーの耐久性と安定性に優れています。最大配管長20メートルまでの仕様が多く、立ちおろし工事におけるトラブルが少ない機種としてプロの施工業者からも信頼されています。
空気清浄機能「プラズマ空清」などが搭載されており、冷暖房以外の付加価値も高いモデルです。長い配管を通る冷媒の流れをスムーズに制御する技術により、立ちおろし環境でも安定した心地よさを提供します。
三菱電機 霧ヶ峰 Zシリーズ(配管長15m・高低差10mの例)
三菱電機の「霧ヶ峰」Zシリーズは、センサー技術「ムーブアイ」により、部屋の隅々まで温度を感知して効率よく運転を行います。配管長15メートル、高低差10メートルという仕様は、一般的な2階建ての立ちおろしに過不足なく対応しています。
三菱のエアコンは、将来的な分解洗浄やメンテナンスがしやすい構造になっていることが多く、点検の手間が増える立ちおろし設置において、長期的な維持管理のしやすさが光ります。安定した性能を求める家庭に最適な選択肢です。
ダイキン うるさらX(配管長15mの仕様記載がある)
ダイキンのフラッグシップモデル「うるさらX」は、加湿や換気を行うための専用ホースが通常の配管と一緒になっています。そのため、配管全体が太くなり、立ちおろし工事の難易度は他の機種より上がりますが、それでも15メートルまでの配管長に対応しています。
加湿機能や換気機能を重視する場合、2階から1階への立ちおろしであっても、その恩恵を享受できるのはダイキンならではの強みです。ただし、配管カバーが通常より太くなるため、外観への影響を事前に確認しておく必要があります。
2階室内機×1階室外機で起きやすい問題と対策
設置が完了した後、あるいは数年後に発生しやすいトラブルについても知っておく必要があります。これらは施工時の工夫や、事前の確認で防ぐことができるものが多いため、対策をしっかり立てておきましょう。
冷媒追加と真空引きの品質差が出る
エアコンの配管が一定の長さを超える場合(多くの機種で10メートルや15メートル)、あらかじめ室外機に封入されている冷媒ガスだけでは足りなくなり、ガスの「追加充填」が必要になります。この作業は1グラム単位での正確な計量が必要であり、施工担当者のスキルや丁寧さが問われる部分です。ガスが少なすぎれば冷えが悪くなり、多すぎればコンプレッサーに過剰な負荷がかかり故障の原因になります。
また、長い配管内部の空気を抜く「真空引き」作業も重要です。配管が長いほど、内部の湿気や空気を完全に取り除くのに時間がかかります。この作業を短時間で済ませてしまうと、内部に残った水分が原因で配管が錆びたり、冬場に凍結したりして故障を招くことがあります。立ちおろし工事を依頼する際は、単に安さで選ぶのではなく、「追加充填の要否」や「真空引きの実施」について明記し、丁寧な作業を約束してくれる業者を選ぶべきです。
壁の貫通と化粧カバーで見た目が変わる
2階から1階へと下ろされる長い化粧カバーは、建物の外観において非常に目立つ存在になります。外壁の色と合わないカバーを選んでしまうと、後から見て非常に後悔するポイントになります。多くのメーカーから「アイボリー」「ブラウン」「ブラック」「グレー」「ホワイト」などのカラーバリエーションが出ていますので、必ず外壁の色と最もなじむものを選びましょう。
また、配管が1階に到達するまでの「ルートの直線美」も重要です。雨樋の横に沿わせる、窓のラインに合わせるなど、建物の水平・垂直のラインを意識して固定することで、目立ちにくくスッキリとした印象に仕上がります。施工前に職人と「どこを通すのか、どの色にするのか」を現場で指差し確認することが、外観トラブルを防ぐ唯一の方法です。
隠蔽配管や既存配管の再利用で難易度が上がる
壁の中に配管を埋め込む「隠蔽配管(いんぺいはいかん)」の場合、2階と1階の高低差はさらに厄介な問題を引き起こします。配管の中に冷媒と一緒に循環している「冷凍機油」というオイルが、高低差があるとうまく室外機に戻ってこなくなる現象が起きやすいためです。これを考慮せずに古い配管を再利用して新しいエアコンを取り付けると、コンプレッサーが焼き付いて故障するリスクが高まります。
もし隠蔽配管や既存配管を再利用する場合は、以下の対策が必要です。
- 配管洗浄(内部の古いオイルや不純物を洗い流す)の実施
- 各メーカーの「配管再利用対応モデル」の選定
- オイル戻りを助けるためのトラップ施工の有無を確認
隠蔽配管は見た目は美しいですが、立ちおろしとの組み合わせは技術的な難易度が非常に高いため、必ずエアコン設置のスペシャリストに依頼してください。
将来の交換と点検の手間が増える
立ちおろし設置をしたエアコンは、10年後や15年後の買い替え時にも、同様の高所作業費がかかることを忘れてはいけません。また、万が一ガス漏れや故障が発生した際、点検するためにサービスマンがハシゴを使って2階の接続部を確認しなければならず、通常の修理代に加えて「高所作業費」が別途請求されることが一般的です。
将来的なコストを抑えるためには、以下の対策が有効です。
- 耐久性の高い高品質な配管部材・化粧カバーを使用してもらう
- 10年延長保証などの長期保証に加入しておく
- 買い替え時には「前回も立ちおろしだった」ことを明確に伝え、見積もりを比較する
立ちおろし設置は、初期費用だけでなく維持管理費用も「割高」になることをライフサイクルコストとして受け入れておく必要があります。その上で、ベランダを広く使うというメリットが上回るかどうかを判断するのが賢明な選択です。
まとめ|2階のエアコンで室外機を1階に置くときの注意点
2階のエアコンから室外機を1階へ下ろす立ちおろし設置は、ベランダがない家や外観を一部にまとめたい場合には有効な手段です。しかし、工事費が数万円単位で高くなること、冷暖房効率にわずかな影響が出ること、そして将来のメンテナンスコストが増えるというデメリットを正しく理解しておく必要があります。
設置にあたっては、長配管・高低差に強いハイグレードな機種を選び、信頼できる施工業者に依頼して「真空引き」や「冷媒充填」を正確に行ってもらうことが大切です。また、外壁の色に合わせた化粧カバーの選定など、見た目の美しさにもこだわることで、後悔のないエアコン設置が可能になります。将来のコストまで見据えた上で、最適なプランを立てましょう。

